大学教員の仕事を見てみよう—国際学会での研究発表(1)イギリス—
今回と次の記事は、夏休み特別企画として大学教員の仕事の一部をご覧いただきます。大学教員の仕事に「教育」があるのはもちろんですが、それと同じくらい「研究」も重要です。その過程で国際学会に参加することもあります。7月に私(眞田)がイギリスに、水島先生がベルギーに出かけました。そこで、イギリスとベルギーの学会参加と合間の異文化体験の記事を写真と共にお届けします。大学教員の仕事について少しでも知っていただき、現地の様子や写真などを楽しんで頂ければ幸いです。 今回はイギリス出張の記事です。 【イギリス出張(眞田)】 今回のイギリス出張の目的は、「第13回国際認知言語学会」への参加でした。国際学会なので、学会会場での言語は英語です。発表も質疑応答もそうです。学生に英語を教える我々ですが、こうして自分でも英語を使い、英語力を落とさないよう努めるのです。
私は10年以上「英語の助動詞の意味・用法・歴史」に興味を持って研究していますが、今回発表したのは、『~に違いない』という意味のhave toについて。このような意味のhave to自体は既に知られていますが、実際どういう風に使われているかは、私の知る限りほとんど研究されていません。例えば、何が主語に来やすいか(→3人称の無生物主語が圧倒的に多い)、have toの後ろにはどんな動詞が来やすいか(→beが来る用例が実に約7割)。また、この調査結果を良く見ると、助動詞全体に関するこれまでの研究に潜む「問題点」が見えてきます。そのことも議論しました。 さて、ここから先は私が体験したイギリスの話です。「日本との文化の違い?」「現地でよく見かけた英語表現」そして「イギリス料理」に話を絞ります。 まず、「日本との文化の違い?」。海外に行くと日本のサービスのきめ細かさを痛感します。例えば、空港から地下鉄で市街地に向かう予定だったのに、なぜか地下鉄は動いていない。空港の社員は代わりの交通手段を教えてくれるものの、日本と違い「謝罪」から始まることはなく、淡々と理由が説明されます。謝罪する動機や頻度等が文化によって違うのでしょう。仕方がないのでタクシーで市街地まで向かったのですが、運転手に地下鉄が止まっている理由を聞いたら、「ここはそういう国だから(笑)」…日本ではまず聞かない一言ですね。 せっかくなので、ホテルに行くちょっと手前でタクシーを下ろしてもらい、街を散策。どこを歩いても建物が美しい。
次に、「現地でよく見かけた英語表現」について。写真を撮り忘れましたが、“To Let”という表現をよく見かけました。最初は本気で“Toilet”と見間違えてしまったのですが、これは「空室あります」「テナント募集中」という意味(ちなみにアメリカ英語だと“For Rent”)。辞書でLetを引けば見つかりますが、日本の英語の授業ではまず見かけないですよね。 英語表現からは離れますが、このニューカッスル近辺は、「ジョーディ英語」(Geordie English)という方言が話されています。日本語に北海道弁や関西弁があるように、英語にも方言や訛りがあるのですが、これも日本の英語の授業ではあまり取り上げられないと思います(なお、滞在先は早口の人が多く、聴き取りに苦労しました)。 最後に「イギリス料理」について。あまり評判がよろしくないようですが、私の味覚では「思っていたよりは美味しい」です。例えば、こちらはボリュームたっぷりのイングリッシュ・ブレックファスト(English Breakfast。ちなみに、地方によって呼び名が変わります)。
▲朝食。この時4泊しましたが、全てほぼ同じメニューでした。
卵料理、ベイクドビーンズ(実はベイクしていない)、ベーコン、ソーセージ、炒めたマッシュルーム、ベイクドトマト、そしてブラックプディング(プディングですがスイーツではありません)が定番メニューです。味は悪くありません。ただ、ボリュームが多いので飽きます。 それと、定番の「フィッシュアンドチップス」。白身魚のフライにフライドポテト(イギリス英語ではchipsと呼びます。アメリカ英語ではFrench fries)。
▲イギリスでぜひ食べたかったフィッシュアンドチップス。
揚がり具合は私好みでしたが、味があまりついていないので、そのままだと飽きます。ということで、ケチャップ・ウスターソース・塩コショウ・ビネガー(酢)で自分の好きなように味を付けるのです。 わずか4泊の滞在でしたが、それでも直接異文化を体験することは刺激的です。今後も、異文化体験の意義深さを私なりに学生に伝えられればと思います。また、今回の研究を通して知ったこと(have toの使われ方)や研究以外の場でも活かせそうなこと(事実を丹念に見ること、他人の言うことを鵜呑みにしないこと)を、講義などで学生に伝え、「研究」成果を「教育」に還元していきたいと考えています。