いま現在，世界にはどのくらいの数の言語が存在すると思いますか？
200近くある国家の数と同じくらいか，それよりも少ないと考える人もいるかもしれません．しかしじつは，世界には5,000から8,000くらいの言語 があるとされているんです．　英語や日本語などの一部の大言語を除くと，そのほとんどは話し手が非常に少なく，かつ表記のための文字を持ちません．そんな 話し手の少ない言語には，舌打ちをするような発音方法をもつ言語や，非常に複雑な文の組み立て方をする言語など，大言語にはないさまざまな特徴が見られま す．こうした多くの言語のさまざまな特徴を調べること，それは「言語とは何なのか？」という謎を解明するための手がかりになっていくはずです。
わたしの専門とする「記述言語学」という学問分野は，話し手からの聞き取り調査をもとに分析をおこない，その言語のさまざまな特徴を描き出すことを目的と しています．そうした描き出された言語の姿が多ければ多いほど，「言語とは何か」の解明に近づくことでしょう。
わたしはモンゴル語やそのなかまの言語（シネヘン・ブリヤート語，ハムニガン・モンゴル語という言語）を研究の対象として，中国東北部に出かけて調査・分 析をおこなっています．夏はさわやかな青空のもとで，冬は厳しい寒さのなかでおこなうフィールドワークは，机の上だけの勉強とは違う開放感があります．も ちろん楽しいばかりではなく，毎回思いもかけないハプニングや困難にも見舞われます．そして必ずしも毎回，満足のいく発見があるとは限りません．でもそん な困難があるからこそ，ひとたび発見があったときには大きな喜びを得ることができます．そして，こうした言語にふれ，現地のひとびとの暮らしにふれること で，日本語に，また日本の文化に対しても多くの疑問や興味がもてるようになっていきます。
机にかじりついて外国語を学習しているだけでは決して体験できないこんな喜びを感じてみたい，フィールドワークの様子をもっと詳しく聞いてみたい，そう思ったあなた！　歓迎します。