社会福祉援助技術現場実習の実習報告会が開催されました
2009年の暮れも押し迫った12月26日(土)の13時から17時にかけて、2009年度社会福祉援助技術現場実習・実習報告会が開催されました。主催は2009年度の実習生です。9月下旬に組織された報告会実行委員会が中心となって、10月上旬から何度も打ち合わせを行い、準備を重ねてきました。
報告会は、第1部と第2部にわかれており、第1部では領域ごとにどのようなところでどのような実習をしてきたのかについて報告がありました。特に次年度に実習に行く2年生にとっては領域ごとの実習内容が理解できたと思います。第2部では、実習生が領域ごとではなく、テーマごとに4つのグループでの検討をもとに発表するという、領域別の共通点と相違点を意識した発表スタイルでした。
4つのテーマは「実習生の立場で学んだこと」「コミュニケーションの取り方」「利用者にとって良い環境とは」「私たちの考えるソーシャルワークとは」で、いずれのグループもメンバーに児童・障害・高齢者の領域で実習を行った学生が入っていました。発表までの検討作業の段階では、手堅くまとめていったグループもあり、議論が迷走したグループもありといった感じでしたが、当日の発表ではいずれのグループも実習経験をふまえた検討内容となっていて興味深く、2年生や3年生のほか、教員からも複数の質問が出ていました。
「実習生の立場から学んだこと」では、いくつかの具体的な場面を例示しながら、利用者と職員との間で形成された人間関係のなかに実習生として入ることへの戸惑いが挙げられたほか、利用者の理解不足や知識不足から関係の取り方に困ったことが報告され、戸惑ったり、焦ったりするよりも「今、自分ができること」に集中することや、「積極的に関わってみること」「相手の立場にたつこと」の大事さが述べられました。そして、会話や遊びをとおして信頼関係をつくっていくことの重要性が指摘されました。
「コミュニケーションの取り方」では、領域ごとに印象的な場面を取り上げての報告でした。児童領域では、児童養護施設で決められた時間に起床することが苦手な子どもへの対応を、職員と実習生とで比較していました。また、障害領域では意思表示の仕方が異なる3人の利用者のコミュニケーションを検討していました。高齢者領域では、失語症の女性とのコミュニケーションの具体的な方法を検討していました。3つの検討の結論として、利用者の年齢や障がいの違いによりコミュニケーションの方法には領域によって多少の違いがあったものの、相手のことを考え、相手の立場に立って関わる姿勢の共通性が述べられました。
「利用者にとって良い環境とは」では、グループで考えた良い環境を4つにまとめていました。①経済的な面で不安がない環境、②利用者が自分の意見を言いやすい環境、③出来なかったことができるようになる、次のステップが用意されている環境、④その人がその人らしく生活できる環境。これらの4つは、各領域の具体的な場面の検討から導き出されたもので、それぞれに実際に経験した内容が紹介されました。
「私たちが考えるソーシャルワーク」では、国際ソーシャルワーカー連盟のソーシャルワーク定義、ソーシャルワーカーとは何かについてテキストなどをもとに調べた上で、領域ごとに経験した内容をふまえてあらためてソーシャルワークについて報告がありました。3領域の実習経験を比較して見えてきたこととして、高齢者領域ではケアワークとソーシャルワークが明確に区別されていたのに対し、障害と児童領域では両者に明確な区別がなかったということが述べられました。共通点としては利用者が抱えている問題やニーズに気づき、本人だけでなく家族や関係機関や地域全体をまとめること、利用者が相談しやすいような環境をつくることが重要だと述べられ、ソーシャルワークの国際定義にある「人びとがその環境と相互に影響しあうその接点に介入する」という内容がそれにあたるというまとめでした。
グループからの発表に続いて、実行委員会が招聘したコメンテーターの花澤先生(北海道医療大学/昨年度の本学「社会福祉援助技術論」非常勤教員)から、このような報告に至った議論の具体的な内容や経過をもっと知りたいという「辛口?コメント」(本人曰く)や、現場感覚のあるソーシャルワーカーの仲間になってほしいという熱いエールがおくられました。
終了後は、近くの居酒屋で打ち上げとなり、大いに盛り上がりました。