標津町「鮭の聖地の物語」ー大國ゼミが現地調査
標津町をはじめとする釧路市・別海町・羅臼町の根室海峡沿岸地域の1市3町は、2020年に文化庁の日本遺産に認定されています。知床などの世界遺産ほどのネームバリューはありませんが、地域の文化財をつなぐ「鮭の聖地」のストーリーを積み上げていくことで、この地域の歴史的・文化的・経済的な広がりと深まりを一つの形として示すことに成功していると評価することができます。
大國ゼミでは、主として標津町に焦点を当てて、そこに暮らす人びとの仕事と生活の中に、「鮭の聖地の物語」がどのように影響を及ぼしているのかに関心を持って現地調査を行ってきています。
2年生は「鮭の聖地」に触れる
2年生は初めて標津町を訪れました。「鮭の聖地」のエントランスとして、標津サーモン科学館と標津町ポー川史跡自然公園の視察・見学を初日に行いました。
サーモン科学館では、鮭の生態についてのレクチャーを受け、鮭類の水槽で実物を観察し、鮭を食料としてきた人間と鮭との1万年にわたる歴史に思いをはせます。
ポー川史跡自然公園では、資料館で縄文時代の竪穴住居遺跡や出土品についてレクチャーを受け、さらに歴史をたどりながら江戸時代末の標津町の様子を描いた「標津番屋屏風」の解説を受けます。その後、往復1時間半を歩いて、カリカリウス遺跡の縦穴住居群を実際に見学します。若干高台に設置された住居跡、そこにたどり着くまでに何回も川を渡っていて、その川に鮭が遡上していたのだなとイマジネーションを湧かせるエクスカーションになりました。
4年生は標津町で聞き取り調査
4年生は2度目の標津町訪問です。初日は隣町の羅臼町の郷土資料館で学芸員の方から解説を受けます。
羅臼町の学芸員の方は本学人文学部の人間科学科卒業生の学芸員 天方 博章氏。漁業と農業の2つを基幹産業とする標津町とは異なり、羅臼町は漁業のみが基幹産業です。経済的な基盤の違いが、人びとの生活にどのような影響を及ぼしているのか、今後の調査・研究のテーマになりそうです。
午後は、2011年に標津町に移住して、野付半島でポンノウシテラスというカフェと民宿を営む方からお話をうかがいます。標津町に移住して独特の活動を行っている方がそれなりの数、いらっしゃって、何が彼ら/彼女らを惹きつけているのか、興味がふくらみます。
根室標津駅跡にある転車台も見学
初日の最後には、廃線となった標津線の根室標津駅跡にある転車台に集合し、標津転車台保存会の事務局長の方からレクチャーを受けます。機関車C11型も電動で動かせるように整備して、転車台中央まで動かすと、転車台を人力で回転させることができるそうです。この日は、機関車を動かすことができる方がいらっしゃらなかったので、いつの日にか、機関車と転車台が動く姿を見に行きたいものです。
最終日はDJ実演も
調査最終日は、4年生はアイヌ刺繍愛好家の方から、アイヌ刺繍の作業を実際に行う体験をしました。この方は、服飾に関心があるとのことで、「標津番屋屏風」の物見台に立っている人物の服装から、標津地域の現場のリーダーではないかという仮説を示してくれました。屏風に描かれた人物の服装に着目する視点が新鮮だと思います。
2年生は午前・午後、4年生は午後、標津の方々からお話をうかがいました。ポンノウシテラスの方、しべつ未来塾という標津の20代30代のメンバーが若者のリーダー育生・異業種間交流の活動を行っているグループの代表の方、しべつAmieさんという漁師のお母さん方のグループのメンバー、独自の視点で観光ガイドをなさっている方、サーモン科学館の副館長の方からさまざまなお話をうかがっています。
最終日の夜、標津町にDJカフェがないことを憂いていた音楽好きの人びとが、「ないならば自分たちで作ってしまおう」というスタイルで立ち上げたcafé & musicbar siteに全員でおじゃましました。お店で活動しているDJグループの方もいらしてくださって、学生たちにDJを実演してくれたり、話をしてくださって、賑やかに過ごしました。
標津町の皆様のあたたかさに感謝
標津町の大勢の皆さまに温かく迎えていただいて、今年の調査合宿も無事、終えることができました。参加した学生たちは、この調査合宿で何を得たのか、自分が経験したことはどのような意味があるのか、そのことは標津町にとっていかなる価値があるのか、標津町のことを知っていくことと、自分の地元や今住んでいる地域との間にどのような関係があるのかなど、後期を通じて検討していくことになります。年度末に完成する「調査報告書」を楽しみにしていただければと思います。
- 発行日: 2023.09.28
- 経済経営学部 経済学科