「期間限定のキリンビール社員」
札幌学院大学経営学部では2011年度から課題解決による能力開発教育として実践型インターンシップを正規科目に取り入れ行っています。2018年度はニーズ株式会社がコーディネートする教育プログラムの下、10名の経営学部3年生をキリンビール株式会社北海道統括本部へ受け入れて頂き、キリンビール流のマーケティング企画を学習、体験しました。当インターンシップのコンセプトは「期間限定のキリンビール社員」、キリンビールの若手社員と同様に課題を与えられ、上司から指導を受けるというものです。キリンビール北海道統括本部営業企画部副部長の上田幸男様、ニーズ取締役会長の石井宏和様、ニーズ代表取締役の上山琢矢様からご指導を頂き、脱落者もなく、全員が一回り成長して、インターンシップを終了しました。
インターンシップの第1回目は5月29日にキリンビール北海道統括本部内で行われ、食品業界のバリューチェーンの分析と経営に関して3名の講師陣から説明がありました。第1回目の課題は食品業界のバリューチェーンへ、国連の開発目標であるSDGs(Sustainable Development Goals)を取り入れる提案をまとめることでした。参加学生は食品業界のバリューチェーンの分析を理解出来たものの、耳馴染みのないSDGsをバリューチェーンへ取り入れた新たな事業を考えるのは難しかったようでした。
6月14日に行われたインターンシップ第2回目前半はキリンビール千歳工場の生産過程を視察し、キリンビール北海道千歳工場総務広報担当部長の辻井一郎様他から説明を頂きました。コンピューター制御による自動化された生産工程と共に、品質管理には社員が自ら行うことで、万全を期していることに学生は驚いていました。後半は同工場内で上田様(キリンビール)の講義により「本麒麟」を事例にキリンビールのマーケティングと営業手法を学習しました。第2回目の課題は若者のビール離れに対する対策でした。インターンシップ参加学生のような若者を対象に、もっとビールを楽しんでもらうにはどうするか、という課題は当事者視点に基づく提案をできる、課題と言えます。しかし、課題に対する参加学生の反応は芳しくなく、「ビールは苦くて飲みたくない」といった否定的意見が多かったです。
「こんなんじゃダメ」
6月28日に行われたインターンシップ第3回目はキリンビール北海道統括本部内で、10名の参加学生を3グループに分けて、具体策の検討を行いました。各グループには上田様(キリンビール)、キリンビール北海道統括本部営業企画部の大橋知代子様、そして石井様(ニーズ)が入り、学生の議論へ適切な教示を頂きました。第3回の課題は第2回の課題を掘り下げ、若者にビールをもっと親しんでもらうためのマーケティング企画を各グループが具体的に提案するものでした。第3回課題の提出後、上田様(キリンビール)、上山様(ニーズ)、石井様(ニーズ)より「この状態では、事業の意思決定ができない」といった非常に厳しいダメ出しのコメントが各グループへフィードバックされました。
インターンシップ最終回はキリンビール社員の前で、若者にビールをもっと飲んでもらうための具体的提案をプレゼンテーションします。ところがそのプレゼンテーションの1週間前に提出した課題ですら、合格点にはほど遠い内容で、インターンシップ科目責任者の私には3人の講師陣から「しっかり指導してくれ」という強く要望された一方、参加学生からは「もう無理」といったギブアップとも言えるような声もありました。そんな彼らをなだめすかし、どのように企画としてまとめるかの方法を説明したところ、ある学生は情報収集のために他メーカーへ電話取材したり、ある学生は新商品のレシピ開発をしたり、残り1週間を企画提案づくりに頑張りました。
「本気で取り組むインターンシップ」
7月12日、インターンシップ最終回がキリンビール北海道統括本部で行われ、当日はキリンビール株式会社から北海道統括本部営業企画部長兼総務部長の小林信弥様や本社CSV戦略部主査の永元禎人様をはじめとして10名が、ニーズ株式会社からは上山様と石井様が参加し、学生のプレゼンテーションを聞いていただきました。その中で数人が評価者として参加学生のプレゼンテーションを評価し、優秀グループを決定します。最初に報告したAグループは「若者に好まれ、拡散されるビール」というテーマで報告しましたが、SNSを中心としたプロモーションは有効と考えられるもの、具体性に欠けるという意見が出されました。二番目に報告をしたBグループは「若者のビール離れ、その若者に飲んでもらうにはどうしたらいいのか。」をテーマにプレゼンテーションをしました。その際にBグループが企画した新商品を参加者に試飲してもらい、好評を博しましたが、新商品のポジショニングや投資回収に関する計画が甘いという意見もありました。最後にプレゼンテーションを行ったのは「若者がビールを飲むようになる極秘ファイル」をテーマに掲げたCグループでした。Cグループも新商品を企画し、販売していくという内容でプレゼンテーションを行い、参加者に試飲をしてもらいました。Cグループは地元ビール会社への聞き取りをして原価計算を行うなどで評価されましたが、ビールの味の特性を活かしていないことや価格設定の甘さが指摘されました。
各グループのプレゼンテーションが終了し、評価者が3グループのプレゼンテーション内容を評価しました。営業企画部長兼総務部長の小林様(キリンビール)からその採点結果の発表があり、Bグループが最優秀グループとして選ばれました。結果が発表された瞬間、選ばれたBグループ3人の喜びの様子と、Cグループ3人の悔しそうな表情が対照的で、強く印象に残りました。優秀グループと評価されたBグループ全員は8月に大通で行われるキリンビールのビアガーデンへ招待され、その労をねぎらって頂けることになっています。大きな成果を挙げた当インターンシップに関わって頂いたキリンビール株式会社とニーズ株式会社の関係者の皆様へは改めて感謝申し上げます。
科目の単位認定者としてインターンシップに関わり思ったことは、2ヶ月、計4回という限られたインターンシップの中で、参加学生が与えられた非常に難しい課題へ本気で取り組み、大きく成長した、良くできたプログラムだったということです。これまで本気で何かを取り組んだ経験の少ない学生には思い切った負荷を与え、その負荷を乗り越えていく、こうした能力開発も必要です。経営学部には社会という厳しい環境の中で課題を解決していく実践型の教育が少なからず用意されていますが、インターンシップという科目はその代表例と言えます。厳しい環境の中で本気で頑張り、成長したい皆さんは、ぜひ経営学部のインターンシップを履修して下さい。
文責:河西邦人(経営学部教授)
小林信弥様から開講のご挨拶
上田幸男様から厳しくも温かな教育指導
Aグループプレゼンテーション
Bグループプレゼンテーション
Cグループプレゼンテーション
小林信弥様から優秀賞の発表
ニーズ株式会社の上山琢矢様