臨床心理学科

Department of Clinical Psychology

【臨床心理学科】新型コロナウイルスの感染拡大にともなう子どもたちのストレスと対応について(第2版)

2020.03.16

お知らせ
子供たちに安心感を
 北海道での新型コロナウイルスの感染拡大は予断を許さない状況です。緊急事態宣言が出されて感染への不安と緊張がにわかに高まりました。今は全道民が辛抱のときですね。子どもたちにとっては、臨時休校が延期されることが決まり、外出を控えるように呼びかけられることで「いつもの生活」を送ることができない状態が続いています。こういうとき、子どもたちにはいったいどういったストレスがかかってどのように対応すればいいのでしょうか。 

1.コロナウィルスの影響によって考えられるストレス

(1)感染への不安と恐怖
  *自分だけではなく親や身近な人の感染を気にする子も多い
(2)外出の制限や友だちとふれあって遊ぶことができない不自由さ
(3)卒業、受験関係のイベントの中止や縮小など急激な予定変更に伴うストレス
(4)これからどうなっていくのか、見通しが立っていないことへの不安
(5)休校になることで親に負担をかけてしまうんじゃないかという不安
(6)仕事や経済状況など、親の不安を受けて不安を感じる子も多い

2.ストレスから生じやすい子どもたちの反応

  (1)身体面に現れるもの
  ・不安で眠られない(寝つきが悪い、すぐに目がさめる)
  ・考え込んでボーッとしたり気持ちが暗くなったりする
  ・頭痛、食欲不振、動悸、疲れやすさなどの身体症状

(2)心理面に現れるもの
  ・イライラしやすい
  ・集中力がなくなる
  ・ちょっとしたことでも気になってしまう
  ・これからのことが心配で仕方ない
  ・やる気が出ない

(3)行動面に現れるもの
  ・一人でいたり一人で行動するのを嫌がる
  ・親にくっつきたがったりやたらと甘えてきたりする
  ・すぐに泣いたり怒ったりする
  ・落ち着きがない、やたら騒ぐ、ハイになる
  ・感染に関するニュースを嫌がる
  ・その他、いつもと違う行動

3.対応のヒント

子どもたちの不安
 大人が考える以上に子どもは過敏で不安になりやすいことを理解し、安心感を与えることが基本になります。今回の感染拡大に関しては、確実に大丈夫と言い切れないところが難しいところですが、それでもこまめに安心感を与えることは有効だと思います。
(1)家庭での感染予防をしっかりと

手洗い、消毒、マスク着用、他人との距離をとり人が集まる場所には行かない、定期的な換気など、推奨されている感染予防対策をとってください。
これらを実行することは安心感を作っていくことにつながってきます。

(2)不安を否定しないで受け止める

*子どもが不安を訴えてきたり何か不安そうなときにはその気持ちを受け止めてあげてください。さえぎらずに話を聞いてあげて「そうだね」「怖いね」などの共感的な言葉をかけてその気持ちを口にできるタイミングを与えてください(無理に語らせる必要はありません)。小さな子がスキンシップなど身体で甘えてきたときは、スキンシップで応じたり、一緒にいてあげたり遊んであげたり、そばで寝てあげるなど安心できるような関わりで応じてください。

*心配や不安になるのは当たり前のことで、「正しくおそれる」という言葉があるように、予防のための不安は、むしろ必要です。「そんなことで不安になるなんて」「そんなこと気にしてるの?」「気にしすぎじゃない?」など子どもの気持ちを否定しないようにして、「感染(うつ)らないように心配するのは大事なことよ。だけど、〇〇ちゃんは〜〜をしっかりやっておけばいいのよ」など、現実的な道筋をつけてあげるといいのではないでしょうか。

*何が起きているのかよくわかっていなかったり、間違った情報を信じて不安がっていたりしている様子であれば、正しい情報をわかりやすく話してあげてください。

*過剰に自分のせいじゃないか、と不安がる子どもがいます。そういうときは、誰のせいでもなく、もちろんあなたのせいではないということを説明します。


(3)閉塞感や先が見えないところからくる気分への手当て

*感染への不安が広がり、なんとなく落ち着かない気持ちになってしまう子どもが出てくるると思われます。卒業や入学を控えている場合など、先の見通しのつかなさからイライラが募ってきょうだいゲンカなども起こりやすいと思われます。その背後に漠然とした不安があるということに思いをめぐらして、「先の見通しがつかなかったりずっと家にいたりしたら誰でも気持ちが苦しくなるんだよね」「ちょっとしたことでむかつくこともあるんだよね」「お母さんだって調子悪くなりそうなんだよ」と受け止めて、「ちょっと散歩しようか。雪で遊ぼうか。体を動かすと楽になるよ」などクールダウンを試みてください。

*保護者の皆さまも同じで、不安やイライラが募るときもあるかと思いますが、クールダウンを心がけて、親子で互いに増幅しあうような悪循環を防ぎましょう。「あなたのせいで仕事に行けない」「家事が増える」などは禁句です。そうでなくても子どもは自責感をもっていたりします。

*こういう機会にこそ、お子さんと「一緒に何かする」ことをお勧めします。トランプやボードゲームなど一緒に楽しめるゲームをしてみたり、料理や何かの創作など。幼いお子さんであれば一緒にお風呂に入るなどのスキンシップを心がけるのも良いと思います。

*正しい情報を知ることは大切ですが、繰り返して感染のニュースに触れていると、不安が膨らんだり、具合が悪くなることがありますので、気持ちの切り替えを適度に行ってください。


(4)元気を後押しする関わりを

*誰かの役に立ったと感じるとき、人は元気になります。子どもたちは、子どもたちなりに何とか親や家庭を助けたいし安心させたいと思っているものです。お手伝いしたり、努力して頑張っている姿が見られたら、すかさずほめてあげてください。日常のちょっとしたことでも、できていることややれたことを見落とさずに、そこに優しい言葉をかけてあげてください。

*人間は意味のないことには頑張れないものです。少し大きな子どもには、今、私たちが学校や社会の活動を抑えて家で過ごしているのは、実はウイルスをこれ以上広げないという国を挙げての大仕事に子どもも一緒に参加しているんだということを伝えてみて、このことについて話し合ってみてはいかがでしょうか。
  • 発行日: 2020.03.16
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